![]() 何十台ものバイクに乗ってきましたが、どんなバイクでもそれなりに楽しんできました。スクーターだって実用車だって運転する楽しみはあります。特定のバイクに対してあまり"思い入れ"を持たない方ですが、それでも特に気に入ったバイクというのもあります。 「TDR250」というバイクに巡り会ったのは30代も半ばの頃で、まだ最近のことです。 「TDR250」は、実に面白いバイクでした。過去にたくさんのバイクに乗ってきましたが、比較する機種があまりない、出色の面白さだったと思います。2サイクル250CCのツイン、初期型のTZR250のエンジンをリファインして、オフロードタイプのフレームに載せています。デュアルパーパスというカテゴリーともちょっと違います。オフロード車としては車重もあるしガタイも大きい。しかしエンジンがエンジンだけに、重い車体を小気味良く引っ張ってくれます。重いといったって、同じエンジンを積んだロードスポーツ車(TZR)よりも軽量です。実際に速いバイクですが、体感する加速感は実速以上。というのも、オフロード車特有の比較的上体が立ち気味の乗車姿勢なので、体感する風圧が強いからです。また、小さなカウルは高速走行時などそれなりに役立つものの、オンロード車のカウリングのような効果はありません。 エンジンは、意外とコントローラブルです。街中では乗り易いと言ってもよいぐらいです。容量の大きいチャンバーの効果で、中速トルクが大きくなっています。始動はキックオンリー。しかし、2ストのツインエンジンの例に漏れず、始動性は抜群。ギヤをセカンドに入れ、またがったままで2〜3歩押しがけするだけで、あっけなく始動します。燃費もそれほど悪くありません。ツーリングなら、平均でリッター20kmを切ることはめったになかったと思います。 高速道路などでは、全くストレスを感じないだけのパワーがありますが、時速120kmを超え、140〜150km/h'b9前後になると、立ちが強くなって、自由に進路を決めづらくなります。反面、ワインディングでは、下手なロードスポーツ車よりも、回転性は優れています。オフロード車の体裁をしていますが、実際にオフロードは走りづらいバイクです。車重のあるTDRでダートを走るのは、面白いけど命懸けです。フラットダートを飛ばしているときに、コーナーでコントロールしにくいフロントのディスクブレーキをかけようものなら、一発でひっくり返ってしまいます。 「シンプル」という視点から見ると、判断が難しいバイクです。一般的なオフロード車の尺度で見たら、シンプルとは言い難い部分もあります。2ストシングルのオフロード車と較べれば、ツインエンジンと言うだけで十分に複雑だし、重量もあります。TDRのどこが面白かったのか、いまだにうまく説明できません。良いバイクの条件が「良く走り」「良く曲がり」「良く停まる」ことだとすれば、あまり条件に合致しているとも思えないのですが…。 全体的に見ればけっしてコントローラブルじゃないけれど、その"クセ"がまた愉快です。エンジン音、排気音もよかった。30も半ば近くになって、この「TDR」に魅せられて、何度もロングツーリングに行きした。東北や北海道に何度も行きました。テントを積んで野宿しながら一日に700〜800Km走っても、全く苦にならなかった。高速道路も、ワインディングも、そしてダートも走りました。10代の頃にこんなバイクがあったらもっと面白かったのに…と考えながら走りました。この「TDR250」は、バイクに乗らなくなった今もまだ所有しています。 |